今回も本の紹介を。
『売上を、減らそう』 中村 朱美 著
1日100食しか売らないという変わったやり方で、
飲食業界ではありえない残業ゼロを実現したお店ということで、
なんかのテレビ番組で紹介されていました。
たまたまそれを見て、面白そうな人だなあと思って本を探して読んでみました。
この本を読んでいる途中、常に頭の中に浮かんでいた言葉は
「足るを知る」
という言葉です。
足るを知る。
なんとなくわかっていたつもりの言葉ですが、改めて調べてみました。
身分相応に満足することを知る、
という意味だそうで、老子の「知足者富」に由来しているそうです。
身分相応にというと、なんとなく上を目指さずに現状で満足しなさい、
というような、少しやる気がなくなるような感じに取れなくもないですが、
私なりの解釈だと、
「周囲や他人の雑音に惑わされず、自分がどうありたいかを定義して、
それを実現する生き方を選択すること」
だと思っています。
おそらくですが、老子もそういう思いで言ったのではないかと思います。
知足者富=足るを知る者が富める
とも読めますもんね。
売り上げを求めない。
それは自分の生き方に反するから。
つまり、この本の著者、中村さんが目指す経営はすべてが自分の価値に基づいていて、
世間一般で価値あるものをされる考え方に惑わされず、
自分がありたい姿を実現するために愚直に行動されている、ということです。
じゃあ、この人は今の姿に満足しているのかというとそうではありません。
100食を売り切るためには商品開発にも力を入れ、
この金額では普通は食べられないようなメニューを提供している。
その結果、利益率は印象業界ではありえない50%だそうで、
税理士さんからもあまりに利益が少ないからやめなさいと何度も言われたそうです。
そして、お客さんの満足度や、従業員の働き甲斐にも常に目を配られている。
100食を安定して売り切る、という考え方だからできる経営手法がたくさんあることはよくわかりますが、
それを安定して実現するということは言葉で言うほど簡単なことではなく、とても難しい。
それ以上の売り上げは求めない代わりに、それを維持するために努力されているわけです。
私たちの普段の行動って、知らず知らずのうちに他人の価値観で決まっているような気がします。
こっちの方が普通だから、こっちの方が社会的に認められているから、
この方がすごいと思われるから、
勝ち組・負け組・・・などなど。
他人や世間一般の価値で推し量り、自分がどちらに進むかを決める。
そんなことってとってもたくさんあると思います。
人間同士の社会で生きているんだから、そうなってしまうのも当然と言えば当然かもしれません。
ですが、自分のありたい生き方を実現するのって、
ある意味他人の価値の中で生きることよりももっと難しいのかもしれません。
特に若い人にとっては、誰かに勝つこと、
誰かよりも社会的に優れていることがステータスだったりしますよね。
学歴もそうだろうし、就活でもらった内定の数だったり、
会社のランクだったり年収だったり。
私はTwitterもやっているんですが、
Twiiterではこの手のことでマウント合戦が繰り広げられています😅
そしてそこで得た社会的な優位性を維持することに懸命になるわけですが、
その優位性は他人の視点で見た価値であり、
自分が求めているものではありません。
そしてその優位性を保てなくなってしまったり、
がむしゃらに頑張ってきたのにふとその優位性が虚構であることに気づいてしまったりします。
時としてその優位性が脅かされてしまうことに耐えられず、
自ら命を絶ってしまう人も残念ながら存在します。
著者は決して店を大きくしようとか、
もっと売り上げを伸ばそうとか、
一般的に人気が出たお店が進むような方向には決して舵を切りません。
それはなぜかというと、自分の生き方に反するからです。
自分が大事にしていることさえ手に入れられれば、
そして自分の近くにいる人が幸せでいられるのであれば、それで満足。
そんなこと、なかなかできるものではありません。
足るを知る。
他人の価値観で生きるのではなく、自分がありたい生き方に沿って生活をする、仕事をする。
そうありたいなぁと思いながら読み進めた本です。