仕事

コストダウンって常に善なの? コストダウンを考える

こんにちは。かこかと申します。

最初に簡単な自己紹介をさせてください。

  • 大手企業の生産技術を研究/開発する部署の課長
    金属切削の製造技術歴 約20年
  • 上司と部下の人間関係を中心に仕事のことを書いています
  • インドネシア駐在経験あり。インドネシア語検定C級持ってます
  • 小さくてもいいからガッツポーズができる人生を目指しています
  • TOC関連の本だとこれがお勧めですね


https://www.shibakin.com/self-introduction/

Twitterもやってます。

https://twitter.com/Shibakin_2019

 

みなさん、コストダウンしてますか!?

コストダウンは製造業においてもっとも普遍的で重要な活動だと思われています。

製造業だけじゃないかな。

何の疑いもなく毎日のようにコストダウン(以下CD)のことを考え、
CD活動をしている私たち。

ですが、CDって常に良いのでしょうか?

私は時々思うのですが、CDって常に良い物だとは思えないんですよね。

今回はこの辺りのことについて書いてみたいと思います。

Baik, ayo mulai !! 🤩
(インドネシア語で、それでは始めましょう、の意味です😋)

もくじ
  1. 誰かが得をするということは、誰かが損をしている
  2. 発想を変えてみたい
  3. 良いCDと悪いCDとは?

 

誰かが得をするということは、誰かが損をしている

工具メーカーさんや油剤メーカーさんなど、いろいろなメーカーさんが
毎日のように商品の売り込みに来てくださいます。

そんな時、みなさんが口を揃えて言うことが
「御社のCDに貢献します」
ということです。

もちろん、我々もそんな提案を受けることで自分たちの出費を減らす方法を考えるわけですが、
以前、とある工具メーカーの営業さんがこんなことを言っていました。

工具の単価を下げたり寿命を延ばしたりしてお客さんに貢献はしているんですが、
自分たちの売り上げを落としているんですよね。
新しい技術を開発して自分たちの首を絞めてるって変な現象ですよね。

この話をしてくれた時は笑い話でしかありませんでしたが、
私はこの時の様子をとてもよく覚えています。

確かにそうだよな

そう思ったからです。

私たちが得をするということは、その分、誰かが損をしているということになります。

仮に私たちにとってはとても無駄な物であり、削減することが善であったとしても、
その分の収入をなくす人たちが一方では必ず存在するわけです。

CDというのは基本的には出費を減らす行為です。
したがって、その分誰かの収入が減るということは当たり前ですよね。

ですが。

じゃあ、実際に自分たちがCDしたとしても本当に自分たちの利益になっているのでしょうか?

間接的にはそうなのかもしれませんが、実感としては感じられませんよね。

それは、CDしたからといってすぐに自分たちの給料が上がったり、
福利厚生がよくなったり、おんぼろのトイレがきれいになったりするわけじゃないからです。

では、私たちが一生懸命知恵を絞り、遅くまで会社に残って絞り出したCDの効果はどこに行ってしまうのか。

それは、お客さんに還元されているわけです。

お客さんに自分たちの商品を選んでもらいたいがために安くで売るんですよね。
その値引きの資源として使われているわけです。

もちろん、自分たちの給料が上がらないにせよ、毎月きちんと給料がもらえるのは
他社に対して競争力を保てているからかもしれません。

ですが、なんとなく納得いかないですよね。

誰かの頑張りで自分たちの出費を抑えてもらい、そこから生まれた利益は誰かの出費を抑えるために使われる。

一体誰が得をしているのだろうかと思いませんか?

最近の世界的な原材料の高騰によって物の値段がとても上がっています。

やっと日本の企業も売値を上げ始めましたが、たとえばもっと上流の取引先さん、
製品を作るための原料を降ろしてくれているメーカーさんや、
生産補助材を降ろしてくれているメーカーさんにも適正な金額で支払われているのか、
大変に怪しいと思っています。

身銭を切ってでも安くする。

売値を上げるなんてもってのほか。

そう思っている企業はとても多いと思います。
特に、この日本においては。

 

発想を変えてみたい

下流のお客さんに得をしてもらうために上流の取引先には損をしてもらう。
そして自分たちはプラマイゼロ。

こんなことをしていても誰も喜びません。

そこで少し発想を変えてみたいと思います。

そもそも、利益というのは次の式で表されます。

利益 = 収入 ― 出費

これは当たり前すぎるほど当たり前ですよね。

ここで出費を減らす、つまりCDをすれば利益が出るわけですが、
私たちが得たい物は利益ですよね?

出費を減らすのはそのための手段であって、それが目的になることはあり得ません。

では、そもそもの目的である利益を増やす方法はCDしかないのでしょうか?

さっきの式を見ればおわかりだと思いますが、答えはNOです。

そうです、収入を増やせばいいわけですよね。

つまり、高く売れば利益を増やせるわけです。

そんなもんわかっとるわい!!
それができひんから苦労してるんやろうが!!

という怒声が聞こえてきそうですが、まあ、現実的にはそれは難しいでしょうね。

では、いつまで経ってもこの貧乏ループとも言えるような連鎖からは逃れられないのでしょうか?

いつまでも取引先に損をさせ、自分たちは儲からないのにお客さんに対して安く売り続けないといけないのでしょうか?

私なりに自分にできることを考えてみました。

上流である取引先さんに得をしてもらえばいい

ということです。

もちろん、お客さんにお金を渡すわけにはいかないですし、私たちもロスは削減しないといけない。

そうじゃあ、どうやって取引先さんに得をしてもらうかというと、
取引先さんに楽をさせてあげて仕事を減らしてあげることだと思います。
もっと言うと、取引先さんのムダな出費を減らしてあげることですね。

意外と多いのが、自分たちが得をするために取引先さんに無理なお願いをする場合があります。
いや、実際には自分たちも得をしていないのに、見せかけだけのCDのために無理なことを言う場合というのが往々にしてあるんですね。

たとえばですが、商社さんに大量の在庫を持ってもらうことです。

自分たちの生産を途切れさせないためには在庫が必要である。
突発で必要になったりすることもあるから在庫は持たないといけません。

在庫を持つということは当然その分の出費が発生します。
ですが、その在庫が必ず売れるとも限りませんし、そのまま使わずに泣く泣く捨ててしまうようなことも頻繁に発生します。

それを商社さんに負担してもらったりしているんですよね。

しかもそれが暗黙の了解だったりもします。

お客さんの方からしたら、
別に在庫を持ってくれと頼んだ覚えはない
と言えるから損はありません。

商社からすると、そうでもしないとお客さんに買ってもらえないから在庫を持たざるを得ない。
首根っこをつかまれて商売をしているようなものです。

この手のムダというか、取引先さんの負担でなんとか成り立っているという状況が生産現場ではよくあります。

そういう無駄をなくすことができれば、取引先さんのロスを減らすことができるわけです。

こちらも損をしていないし、取引先さんのロスを減らすことができて、結果収入増につながる。
そうすれば取引先さんの人たちはCDをせずとも給料が増えることになるわけですよね。

金は天下の回り物と言いますが、今日は取引先、つまり上流の人であっても、明日にはお客さんになるかもしれません。

パン屋さんにパンを買いに来たお客さんも、実は小麦をそのパン屋さんに下ろしている会社の従業員だったりするわけです。

大きな視点で見ると、必ず誰かのお客さんは誰かの取引先になるわけで、大きな輪の中でぐるぐると回っているわけです。

先に述べたような貧乏ループにどっぷり漬かっていると、みんなが少しずつ貧乏になっていきます。
貧乏爆弾をみんなで回しているようなものです。
俺のところで爆発するなよ、と思いながら。

だからこそ、私はいつも損をさせている自分たちにとっての上流の人に得をさせてあげることが、回りまわって自分たちの収入を上げ、給料を上げてくれることになると思っています。

お客さんに損をさせる、つまり値段を上げることができないのであれば、
逆に取引先さんのような上流の人に得をさせてあげればいいのではないかと思うわけです。

私のような工場で働く人間には、お客さんへ売る金額を決めることはできません。
ですが、取引先さんに得をしてもらうような仕事の仕方はできます。
実際には何もお金の動きがないにも関わらず、こちらの働きかけ方次第で取引先さんに得をしてもらうことは自分たちにできる、収入を増やす方法だと思っています。

 

良いCDと悪いCDとは?

 

私の勝手な定義ですが、良いCDと悪いCDとは次のようなものです。

良いコストダウン

本当は価値がないのに、まるで価値があるかのように扱っていることをやめること

悪いコストダウン

本当は価値があるのに、まるで価値がないかのように勘違いして捨ててしまうこと

本当は価値がないのに、今までそうだったから、とか、上司がそう言うから、とか、自分が楽をしたいから、という理由でいつまでもやり続けていることはありませんか?

また、本当は価値があるのに、無条件で上からCDを指示され、なくなく大切な機能を落としたり、大切な道具を捨ててしまったりしていないでしょうか?

特に後者の場合、簡単には捨てさせてくれなかったりする場合が往々にしてあるからやっかいなんですよね。

もう一度確認ですが、利益を出すためには出費を減らすだけではなく、収入を増やせばいいわけです。

特に工場で働く人たちは、自分たちにできるのはCDだけだと思わず、間接的であっても収入を増やす方法を考えてみてほしいと思います。

 

もしこの記事を読んで良いと思われたようでしたら、
コメントをいただけると励みになります。